この本の紹介記事は以前に二度アップしたが、10日の閣議で新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を決定し、改正案が13日にも成立する見通しとなった今、もう一度ここに載せておこうと思う。
『茶色の朝』は20年前にフランスで刊行されベストセラーとなった本である。
作者は心理学者、人権運動家のフランク・パヴロフ。
あらすじは、ざっとこんな感じ。
物語は、主人公である“俺”とその友人のシャルリーが、陽の光がふりそそぐビストロでお互いのペットの話をするところから始まる。
茶色以外のペットを飼ってはいけないという特別措置法ができたことから、シャルリーが飼っていた茶色とはいえないラブラドールを処分したという話をすると、“俺”もまた、白黒ブチの猫を処分したことを告白する。
二人はお喋りをしながら、妙な感じが残り、どこかスッキリしないまま別れた。
それからしばらくすると、今度は『街の日常』という新聞が廃刊され、新聞は『茶色新報』だけになってしまう。
そして次は『街の日常』系列の出版社が刊行した本が、図書館や書店から消されていく。
やがてシャルリーは茶色の犬を、“俺”も茶色の猫を飼うようになった。
≪世の流れに逆らわずにいれば、面倒に巻きこまれることもない。茶色に守られた安心、それも悪くない≫
しだいに、そう思うようになっていった。
ある日曜日のこと。
“俺”はシャルリーと遊ぶため彼のアパートに行くと、自警団によってドアが破壊されているところだった。
シャルリーは茶色の犬を飼っていたのに、なぜ?
野次馬が言うには、過去に茶色ではない犬を飼っていたのが犯罪なのだと。
シャルリーはどこに連れて行かれたのか?
これは、あきらかにやり過ぎだ。
自分は茶色の猫と一緒なら安全だと信じ込んでいた。
今になって“俺”は思った。
「最初のペット特別措置法が施行された時から警戒すべきだった」
「いやだと言うべきだったんだ」
「でも、自分には仕事もあるし、毎日やらなきゃいけないことも多い」
そんな風にやらなかった言い訳を考えていると……
誰かが戸を叩く。
こんな朝早くに……
本書は原作の翻訳だけではなく、高橋哲哉さん(東大教授・哲学者)のメッセージが添えられている。
身の回りで起きる出来事に違和感を感じながらも、日常の忙しさを理由に考えることを停止してしまいがちな私たちに、「やり過ごさないこと、考え続けること」をやさしく語りかけている。
なぜ茶色なのか?
すべてが染まる
1ユーロの本
コーヒーの平和
内側にいる安心
慣れていく怖さ
たくさんの言い訳
日本の茶色
ふつうの人々
批判と悪口
茶色のメガネ
色つきの自由
考え続けること
高橋哲哉さんのメッセージと合わせ読むと、現代日本の危機がひしひしと伝わってくる。
ついでに言うと、高橋哲哉さんの『犠牲のシステム』、こちらもお勧めだよ。
ところで、改正が検討されている新型インフルエンザ等特別措置法だが、これは民主党政権の時に作られたもので、緊急事態宣言のことも書かれている。
←クリックして拡大
第45条
生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
学校、社会福祉施設、興行場その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
第49条
臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。
第50条
特定都道府県知事にあっては指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、特定市町村長にあっては特定都道府県知事に対し、それぞれ必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請することができる。
第53条
電気通信事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ等緊急事態において、それぞれその業務計画で定めるところにより、通信を確保し、及び新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に必要な通信を優先的に取り扱うため必要な措置を講じなければならない
そのほか
(物資の売渡しの要請等)
(埋葬及び火葬の特例等)
(新型インフルエンザ等の患者等の権利利益の保全等)
(金銭債務の支払猶予等)
(生活関連物資等の価格の安定等)
(損害補償)
(医薬品等の譲渡等の特例)
なども規定されているが、どれも穏やかなのだ。
これらを今回の改正では、かなり私権を制約したり、テレビ放送などにも規制できるようにするらしい。
日常の忙しさを理由に考えることを停止してしまわず、「やり過ごさないこと」、「考え続けること」が必要だ。
新型インフルエンザ等対策特別措置法
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『茶色の朝』は20年前にフランスで刊行されベストセラーとなった本である。
作者は心理学者、人権運動家のフランク・パヴロフ。
あらすじは、ざっとこんな感じ。
物語は、主人公である“俺”とその友人のシャルリーが、陽の光がふりそそぐビストロでお互いのペットの話をするところから始まる。
茶色以外のペットを飼ってはいけないという特別措置法ができたことから、シャルリーが飼っていた茶色とはいえないラブラドールを処分したという話をすると、“俺”もまた、白黒ブチの猫を処分したことを告白する。
二人はお喋りをしながら、妙な感じが残り、どこかスッキリしないまま別れた。
それからしばらくすると、今度は『街の日常』という新聞が廃刊され、新聞は『茶色新報』だけになってしまう。
そして次は『街の日常』系列の出版社が刊行した本が、図書館や書店から消されていく。
やがてシャルリーは茶色の犬を、“俺”も茶色の猫を飼うようになった。
≪世の流れに逆らわずにいれば、面倒に巻きこまれることもない。茶色に守られた安心、それも悪くない≫
しだいに、そう思うようになっていった。
ある日曜日のこと。
“俺”はシャルリーと遊ぶため彼のアパートに行くと、自警団によってドアが破壊されているところだった。
シャルリーは茶色の犬を飼っていたのに、なぜ?
野次馬が言うには、過去に茶色ではない犬を飼っていたのが犯罪なのだと。
シャルリーはどこに連れて行かれたのか?
これは、あきらかにやり過ぎだ。
自分は茶色の猫と一緒なら安全だと信じ込んでいた。
今になって“俺”は思った。
「最初のペット特別措置法が施行された時から警戒すべきだった」
「いやだと言うべきだったんだ」
「でも、自分には仕事もあるし、毎日やらなきゃいけないことも多い」
そんな風にやらなかった言い訳を考えていると……
誰かが戸を叩く。
こんな朝早くに……
本書は原作の翻訳だけではなく、高橋哲哉さん(東大教授・哲学者)のメッセージが添えられている。
身の回りで起きる出来事に違和感を感じながらも、日常の忙しさを理由に考えることを停止してしまいがちな私たちに、「やり過ごさないこと、考え続けること」をやさしく語りかけている。
なぜ茶色なのか?
すべてが染まる
1ユーロの本
コーヒーの平和
内側にいる安心
慣れていく怖さ
たくさんの言い訳
日本の茶色
ふつうの人々
批判と悪口
茶色のメガネ
色つきの自由
考え続けること
高橋哲哉さんのメッセージと合わせ読むと、現代日本の危機がひしひしと伝わってくる。
ついでに言うと、高橋哲哉さんの『犠牲のシステム』、こちらもお勧めだよ。
ところで、改正が検討されている新型インフルエンザ等特別措置法だが、これは民主党政権の時に作られたもので、緊急事態宣言のことも書かれている。

第45条
生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
学校、社会福祉施設、興行場その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
第49条
臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。
第50条
特定都道府県知事にあっては指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、特定市町村長にあっては特定都道府県知事に対し、それぞれ必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請することができる。
第53条
電気通信事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ等緊急事態において、それぞれその業務計画で定めるところにより、通信を確保し、及び新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に必要な通信を優先的に取り扱うため必要な措置を講じなければならない
そのほか
(物資の売渡しの要請等)
(埋葬及び火葬の特例等)
(新型インフルエンザ等の患者等の権利利益の保全等)
(金銭債務の支払猶予等)
(生活関連物資等の価格の安定等)
(損害補償)
(医薬品等の譲渡等の特例)
なども規定されているが、どれも穏やかなのだ。
これらを今回の改正では、かなり私権を制約したり、テレビ放送などにも規制できるようにするらしい。
日常の忙しさを理由に考えることを停止してしまわず、「やり過ごさないこと」、「考え続けること」が必要だ。
新型インフルエンザ等対策特別措置法
