画像は本文とは関係ないが、「獅門酒楼」の酥炸蝦芒(海老とマンゴーのサクサク変わり揚げ)。
ここからが本日のメイン。昨日の続きである。
![]()
これは10食限定のミステリーランチで、「二宝拼盆」というもの。「拼盆」とは盛り合わせのことらしい。
蒸し鶏の胡麻ダレ。キュウリが添えられているが、その切り方が2種類ある。千切りと薄切り。千切りのほうは蒸し鶏の下敷きに使われていた。奥に見えるのはトマト。
その手前の白いものは大根だ。最初は中をくり抜いているのかと思ったが、よく観察するとカツラ剥きした大根をギュッと丸めているのであった。もちろん、しっかりした味付けがなされている。
中に包まれているのはサーモンと大葉。その右手前の黄色いものは玉子焼き。といってもクレープ状に焼かれて、中には何やら詰め物が。魚も入っているのかな。
手前の黒っぽいものはピータンとキュウリのピクルス風。その右は説明不要でしょう。エビです。
最後、いちばん右側に見えているのは、野菜のピリ辛風味のある甘酢漬け? なんと言ったらいいのか分からないが、甘酸っぱいなかにピリッとくる辛さが隠れた一品。
以上、9品の盛り合わせであった。すべて冷製で、皿まで冷えていた。これで650円だった![]()
![]()
キジハタの姿煮込み 漁師風。口を大きく開いたままカラ揚げにされたキジハタが、椎茸・厚揚げ・エンドウと一緒に煮込まれている。まずは魚のど真ん中に箸を突き刺す。
汁が飛び跳ねることを警戒しながら一気に箸を押し込む。すると、皮の下から現れたのはホッコリした白身! まずはその身だけを食べてみる。淡白な味わいだ。これに汁を絡めて再び口中へ放り込むと… 美味しい!
![]()
片側を食べつくしてひっくり返す。あっという間に完食だ。最後に残った汁には熱湯を入れて骨湯にしたかったが、やめておいた。
![]()
鱧(ハモ)とズッキーニのBBQソース炒め。サクッと揚げた大きいのが4切れ。肉厚でホコホコしていて旨い! 鱧の持ち味を生かしているのが野菜たちだ。まず表題のズッキーニ。原産地はメキシコで、今ではイタリア、フランス料理に欠かせない素材となっている。
さらに赤ピーマンと玉ネギ。ピーマンの原産地は南米で、それが新大陸発見によりヨーロッパへ渡ったといわれている。開港後の横浜では根岸あたりで西洋野菜の栽培が始まったが、その中にピーマンがあったという記録にはまだ出会っていない。日本では戦後、アメリカから輸入されて一般的になったらしい。
玉ネギの原産地は中央アジア。それが地中海沿岸諸国に伝わり、日本へは明治の初期にアメリカから入ってきたという。
この日のランチは、これらをBBQソースを使って軽く炒め合わせた一品。BBQソースといえばアメリカだが、「獅門酒楼」のメニュー中国語版を見ると「沙茶海鰻」と書かれていた。
沙茶というのは、“魚介類をベースに、にんにく・ごま・香辛料・油を加えて煮込んだ沙茶醤”のことらしい。広東発祥の調味料で、英語ではバーベキューソースとも呼ばれているそうだ。
食べた感じでは、アメリカンなBBQソース味はあまりしなかったので、上記のような中華風調味料なのだろう。だが、その中にかなり強いカレーの香りを感じた。米中協調ソースの中にインドが参入してきたのである。
だけどこれは国際紛争にはならず、なんとも美味しいソースに仕上がっていた。
![]()
夫妻肺片。なんだか危なそうな料理名だが、日本語の方を見ると「牛スネとモツの四川風あえ」とある。
一番下に敷かれているのはモヤシ。その上にハチノス、牛スネ、キュウリ、セロリ。それらがピリ辛のタレで和えられている。そこに胡麻と松の実に似た何かの実。それに唐辛子。
![]()
冬大根の肉詰め 醤油あんかけ。風呂吹き大根+ハンバーグに醤油あんをかけたもので、かなり和食に近い感じ。
厚切り大根の真ん中を彫って凹状にし、その中に肉のミンチを詰め込んでいる。ハンバーグ状の肉が美味しい! 大根も柔らかくてとろける旨さだ。
![]()
中華風煮込みハンバーグ。甘辛いタレの中に身を浸す煮込みハンバーグ! スプーンで少しずつ削り取り、タレを絡めて頬張ると、ほのかな中華テイストを感じる。もちろん美味しい!
合い間に食べる旨みタップリの干し椎茸、シャッキリした青菜が絶妙な箸休めとなる。
この日のスープがまた珍しい牛蒡とジャガイモのポタージュ! 不思議な味わいだった。
![]()
カレー粉入り麻婆豆腐。運ばれてきた麻婆豆腐、見た目ではカレー粉が入っているかどうかは判らない。ごく普通のルックスである。
次にこれをスプーンですくい取り鼻に近づけてみる。が、山椒の香りはするものの、カレー臭は感じられない。その後、ご飯の上にのせて食べ進んでいくも、どこにカレー粉が入っているのかと思うほど、カレーの味は発見できなかった。
それにしても不思議な麻婆豆腐だ。具材は豆腐と挽き肉だけではなく、なぜか白身魚の細切れなんかも入っていた。もしかしたら、カレーではなく「カレイ」の間違いだったんじゃないかと思ったほど。
で、味のほうはというと、これが美味しいの。危うくご飯をお代わりしたくなるほどだった。
![]()
白麻婆豆腐。塩と山椒を使った、茶色くない麻婆豆腐だ。ただ色が白いだけではなく、アクセント的に緑色の絹サヤ、赤色の辣油が参加して、見た目の美しさも演出している。
ふつう麻婆豆腐といえば挽き肉を使っているけれども、この白麻婆豆腐には何故か細切り肉! 肉の食感を楽しめる嬉しいメンバー交代である。
さらに驚いたのは、フワフワの白身魚を揚げたのが入っていたこと。しかも、このコロモがまた白いのだ。陳麻婆豆腐ほど辛くはないが、山椒の香りもほのかに感じられる。塩味もちょうど良い。
![]()
京ハモと白ネギの唐辛子炒め。薄いコロモをまとって揚げられたハモをサクッと噛み切ると、それはまるでウナギかアナゴのような食感! 骨もなく柔らかくて美味しい!
主役の京ハモに劣らないのが、脇を固める野菜たち。白ネギのほかにいろいろなものが入っていた。ニンニクの芽、青菜、カボチャ、クワイ、シメジ、エリンギ、ベビーコーン。そしてタレが旨い!
![]()
鮮メゴチとナスのBBQソース炒め。主役はメゴチとナスだが、他にもエリンギ、小松菜、ニンニクの芽、ピーマン、フクロタケ、ベビーコーンといった脇役陣が両雄を盛り立てているのであった。
メゴチを食べるといったら天ぷらにするのが普通。しかし、ここは中華料理店である。薄い衣をまとわせて軽く揚げたものを、上記のような具材とともにBBQソースで絡めてあるのだ。
淡白な白身を包む衣がソースにまみれてモロモロとなり、アワビのような食感のするエリンギと一緒に口内に投入されると、いや~、ほんとうに美味しい。このメゴチがなんと4尾も入っているのであった。
![]()
冬牡蠣とキノコの豆鼓炒め。牡蠣も美味しいけれど、その旨味と風味を閉じ込めているコロモがまた、なんだか知らないがうまい! かぶりつくと、そのうまいコロモを突き破って、中からプニュっと牡蠣の香りと味が染み出してくる。
さらに脇役陣もなかなかのもの。フクロタケ、シメジ、エリンギ、韮、ニンニクの芽、人参、タケノコなどが、豆鼓まみれに炒められて主役を盛り立てている。
中国楽器と洋楽器を使って演奏する「アメージング・グレイス」などのBGMが、雰囲気を一層高めてくれて、久々に心落ち着くいい感じのランチであった。
![]()
鱈の白子入り麻婆豆腐。豆腐と白子。同じ色をして似たような食感ということもあるが、湯豆腐に入れた鱈や白子を考えれば、この両者が仲良しであることは容易に想像できる。
そこから、麻婆豆腐に白子がマッチすることは、なんとなく想像できていたが、実際に食べてみると、なかなか美味しい。
![]()
泥沼のような麻婆のなかから発掘した白子を頬張ると、麻辣になった口内にまったりした優しさが広がる。まるで灼熱の砂漠の中で出会ったオアシスのよう。(行ったことはないのだが)
私が食べたのは鱈の白子であったが、これをフグの白子にしたら、もっともっと美味しいのではないかと思う。
![]()
海鮮入り蒸しハンバーグ特製ソースがけ。海鮮というのはエビ、カニ、イカ、ホタテのことだった。これらがミンチ肉の上にはめ込まれ、時間をかけて蒸されていた。特製スープは何だろう、よく判らないが、これが肉にも染み渡りとにかく美味しかった。
![]()
あんかけ牡蠣玉丼。玉子の中に閉じ込められた牡蠣の風味が、シイタケで出汁をとったような甘辛な“あん”と絡まって、なんともいえぬ旨みが出ている。牡蠣はそれほどたくさん入っているわけではないので、牡蠣を掘り当てる楽しみもある。玉子にレンゲをグイッと突き刺し、断面を見る。
玉ネギとシイタケが現れたら、チョット残念。でも、絶品の“あん”とともに口中に放り込めば、牡蠣風味の「玉丼」といった風情。
再びレンゲをグイッと突き刺す。今度は牡蠣が発掘された。埋蔵金を掘り当てたような気分だ。日本産の牡蠣のようである。大きさは中ぐらいか。プ~ンと牡蠣の香りが…玉子と“あん”にマッチして旨い。
「天津丼」とも違う、「玉丼」とも違う、ましてや日本蕎麦屋の「かきたま」とも違う、美味しいランチだった。
![]()
美極醤炒肉片(620円)。読み方は分からないが、日本語では「豚ロース肉のカツレツ シーズニングソース炒め」と書いてあった。
いつだったか「ワニ肉」も使っていた。だから「トンカツ」が主役になったって、ここじゃあ、ちっともおかしくなんかない。逆に期待感が高まるのだ!
![]()
もとはサクサクだったはずのトンカツ。このまま食べれば美味しいものを、あえてシットリと湿らせて食べるカツ煮定食の中華版と言ったらいいだろうか。
この味の決め手はシーズニングソースだ。たまり醤油とも違う、牡蠣油とも違う、ものすごく旨みの凝縮したソース。これが甘く炒められた玉ネギにからんで、さらにパワーアップしている、そんな感じがする。
トンカツの衣はこのソースを全身に吸い込み、濡れそぼっている。しかし、だらしなく湿っているのではなく、出自はしっかりした由緒のある豚ロースを使ったトンカツだぞ、という主張が聞こえてくる。
これ1枚でご飯が1杯いけてしまう。危うくご飯をお代わりしてしまうところだった。
![]()
写真では2本乗っているようにみえますが、これは1匹を開いたもの。香味野菜入りの特製香りソースがかかっています。油淋鶏のアナゴ版といったらいいでしょうか。なかなか美味しかったです。
ということで、「獅門酒楼」のランチから 20年分を放出③はここまで。
つづく……
←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね
ここからが本日のメイン。昨日の続きである。

これは10食限定のミステリーランチで、「二宝拼盆」というもの。「拼盆」とは盛り合わせのことらしい。
蒸し鶏の胡麻ダレ。キュウリが添えられているが、その切り方が2種類ある。千切りと薄切り。千切りのほうは蒸し鶏の下敷きに使われていた。奥に見えるのはトマト。
その手前の白いものは大根だ。最初は中をくり抜いているのかと思ったが、よく観察するとカツラ剥きした大根をギュッと丸めているのであった。もちろん、しっかりした味付けがなされている。
中に包まれているのはサーモンと大葉。その右手前の黄色いものは玉子焼き。といってもクレープ状に焼かれて、中には何やら詰め物が。魚も入っているのかな。
手前の黒っぽいものはピータンとキュウリのピクルス風。その右は説明不要でしょう。エビです。
最後、いちばん右側に見えているのは、野菜のピリ辛風味のある甘酢漬け? なんと言ったらいいのか分からないが、甘酸っぱいなかにピリッとくる辛さが隠れた一品。

以上、9品の盛り合わせであった。すべて冷製で、皿まで冷えていた。これで650円だった


キジハタの姿煮込み 漁師風。口を大きく開いたままカラ揚げにされたキジハタが、椎茸・厚揚げ・エンドウと一緒に煮込まれている。まずは魚のど真ん中に箸を突き刺す。
汁が飛び跳ねることを警戒しながら一気に箸を押し込む。すると、皮の下から現れたのはホッコリした白身! まずはその身だけを食べてみる。淡白な味わいだ。これに汁を絡めて再び口中へ放り込むと… 美味しい!

片側を食べつくしてひっくり返す。あっという間に完食だ。最後に残った汁には熱湯を入れて骨湯にしたかったが、やめておいた。

鱧(ハモ)とズッキーニのBBQソース炒め。サクッと揚げた大きいのが4切れ。肉厚でホコホコしていて旨い! 鱧の持ち味を生かしているのが野菜たちだ。まず表題のズッキーニ。原産地はメキシコで、今ではイタリア、フランス料理に欠かせない素材となっている。
さらに赤ピーマンと玉ネギ。ピーマンの原産地は南米で、それが新大陸発見によりヨーロッパへ渡ったといわれている。開港後の横浜では根岸あたりで西洋野菜の栽培が始まったが、その中にピーマンがあったという記録にはまだ出会っていない。日本では戦後、アメリカから輸入されて一般的になったらしい。
玉ネギの原産地は中央アジア。それが地中海沿岸諸国に伝わり、日本へは明治の初期にアメリカから入ってきたという。
この日のランチは、これらをBBQソースを使って軽く炒め合わせた一品。BBQソースといえばアメリカだが、「獅門酒楼」のメニュー中国語版を見ると「沙茶海鰻」と書かれていた。
沙茶というのは、“魚介類をベースに、にんにく・ごま・香辛料・油を加えて煮込んだ沙茶醤”のことらしい。広東発祥の調味料で、英語ではバーベキューソースとも呼ばれているそうだ。
食べた感じでは、アメリカンなBBQソース味はあまりしなかったので、上記のような中華風調味料なのだろう。だが、その中にかなり強いカレーの香りを感じた。米中協調ソースの中にインドが参入してきたのである。
だけどこれは国際紛争にはならず、なんとも美味しいソースに仕上がっていた。

夫妻肺片。なんだか危なそうな料理名だが、日本語の方を見ると「牛スネとモツの四川風あえ」とある。
一番下に敷かれているのはモヤシ。その上にハチノス、牛スネ、キュウリ、セロリ。それらがピリ辛のタレで和えられている。そこに胡麻と松の実に似た何かの実。それに唐辛子。

冬大根の肉詰め 醤油あんかけ。風呂吹き大根+ハンバーグに醤油あんをかけたもので、かなり和食に近い感じ。
厚切り大根の真ん中を彫って凹状にし、その中に肉のミンチを詰め込んでいる。ハンバーグ状の肉が美味しい! 大根も柔らかくてとろける旨さだ。

中華風煮込みハンバーグ。甘辛いタレの中に身を浸す煮込みハンバーグ! スプーンで少しずつ削り取り、タレを絡めて頬張ると、ほのかな中華テイストを感じる。もちろん美味しい!
合い間に食べる旨みタップリの干し椎茸、シャッキリした青菜が絶妙な箸休めとなる。
この日のスープがまた珍しい牛蒡とジャガイモのポタージュ! 不思議な味わいだった。

カレー粉入り麻婆豆腐。運ばれてきた麻婆豆腐、見た目ではカレー粉が入っているかどうかは判らない。ごく普通のルックスである。
次にこれをスプーンですくい取り鼻に近づけてみる。が、山椒の香りはするものの、カレー臭は感じられない。その後、ご飯の上にのせて食べ進んでいくも、どこにカレー粉が入っているのかと思うほど、カレーの味は発見できなかった。
それにしても不思議な麻婆豆腐だ。具材は豆腐と挽き肉だけではなく、なぜか白身魚の細切れなんかも入っていた。もしかしたら、カレーではなく「カレイ」の間違いだったんじゃないかと思ったほど。
で、味のほうはというと、これが美味しいの。危うくご飯をお代わりしたくなるほどだった。

白麻婆豆腐。塩と山椒を使った、茶色くない麻婆豆腐だ。ただ色が白いだけではなく、アクセント的に緑色の絹サヤ、赤色の辣油が参加して、見た目の美しさも演出している。
ふつう麻婆豆腐といえば挽き肉を使っているけれども、この白麻婆豆腐には何故か細切り肉! 肉の食感を楽しめる嬉しいメンバー交代である。
さらに驚いたのは、フワフワの白身魚を揚げたのが入っていたこと。しかも、このコロモがまた白いのだ。陳麻婆豆腐ほど辛くはないが、山椒の香りもほのかに感じられる。塩味もちょうど良い。

京ハモと白ネギの唐辛子炒め。薄いコロモをまとって揚げられたハモをサクッと噛み切ると、それはまるでウナギかアナゴのような食感! 骨もなく柔らかくて美味しい!
主役の京ハモに劣らないのが、脇を固める野菜たち。白ネギのほかにいろいろなものが入っていた。ニンニクの芽、青菜、カボチャ、クワイ、シメジ、エリンギ、ベビーコーン。そしてタレが旨い!

鮮メゴチとナスのBBQソース炒め。主役はメゴチとナスだが、他にもエリンギ、小松菜、ニンニクの芽、ピーマン、フクロタケ、ベビーコーンといった脇役陣が両雄を盛り立てているのであった。
メゴチを食べるといったら天ぷらにするのが普通。しかし、ここは中華料理店である。薄い衣をまとわせて軽く揚げたものを、上記のような具材とともにBBQソースで絡めてあるのだ。
淡白な白身を包む衣がソースにまみれてモロモロとなり、アワビのような食感のするエリンギと一緒に口内に投入されると、いや~、ほんとうに美味しい。このメゴチがなんと4尾も入っているのであった。

冬牡蠣とキノコの豆鼓炒め。牡蠣も美味しいけれど、その旨味と風味を閉じ込めているコロモがまた、なんだか知らないがうまい! かぶりつくと、そのうまいコロモを突き破って、中からプニュっと牡蠣の香りと味が染み出してくる。
さらに脇役陣もなかなかのもの。フクロタケ、シメジ、エリンギ、韮、ニンニクの芽、人参、タケノコなどが、豆鼓まみれに炒められて主役を盛り立てている。
中国楽器と洋楽器を使って演奏する「アメージング・グレイス」などのBGMが、雰囲気を一層高めてくれて、久々に心落ち着くいい感じのランチであった。

鱈の白子入り麻婆豆腐。豆腐と白子。同じ色をして似たような食感ということもあるが、湯豆腐に入れた鱈や白子を考えれば、この両者が仲良しであることは容易に想像できる。
そこから、麻婆豆腐に白子がマッチすることは、なんとなく想像できていたが、実際に食べてみると、なかなか美味しい。

泥沼のような麻婆のなかから発掘した白子を頬張ると、麻辣になった口内にまったりした優しさが広がる。まるで灼熱の砂漠の中で出会ったオアシスのよう。(行ったことはないのだが)
私が食べたのは鱈の白子であったが、これをフグの白子にしたら、もっともっと美味しいのではないかと思う。

海鮮入り蒸しハンバーグ特製ソースがけ。海鮮というのはエビ、カニ、イカ、ホタテのことだった。これらがミンチ肉の上にはめ込まれ、時間をかけて蒸されていた。特製スープは何だろう、よく判らないが、これが肉にも染み渡りとにかく美味しかった。

あんかけ牡蠣玉丼。玉子の中に閉じ込められた牡蠣の風味が、シイタケで出汁をとったような甘辛な“あん”と絡まって、なんともいえぬ旨みが出ている。牡蠣はそれほどたくさん入っているわけではないので、牡蠣を掘り当てる楽しみもある。玉子にレンゲをグイッと突き刺し、断面を見る。
玉ネギとシイタケが現れたら、チョット残念。でも、絶品の“あん”とともに口中に放り込めば、牡蠣風味の「玉丼」といった風情。
再びレンゲをグイッと突き刺す。今度は牡蠣が発掘された。埋蔵金を掘り当てたような気分だ。日本産の牡蠣のようである。大きさは中ぐらいか。プ~ンと牡蠣の香りが…玉子と“あん”にマッチして旨い。
「天津丼」とも違う、「玉丼」とも違う、ましてや日本蕎麦屋の「かきたま」とも違う、美味しいランチだった。

美極醤炒肉片(620円)。読み方は分からないが、日本語では「豚ロース肉のカツレツ シーズニングソース炒め」と書いてあった。
いつだったか「ワニ肉」も使っていた。だから「トンカツ」が主役になったって、ここじゃあ、ちっともおかしくなんかない。逆に期待感が高まるのだ!

もとはサクサクだったはずのトンカツ。このまま食べれば美味しいものを、あえてシットリと湿らせて食べるカツ煮定食の中華版と言ったらいいだろうか。
この味の決め手はシーズニングソースだ。たまり醤油とも違う、牡蠣油とも違う、ものすごく旨みの凝縮したソース。これが甘く炒められた玉ネギにからんで、さらにパワーアップしている、そんな感じがする。
トンカツの衣はこのソースを全身に吸い込み、濡れそぼっている。しかし、だらしなく湿っているのではなく、出自はしっかりした由緒のある豚ロースを使ったトンカツだぞ、という主張が聞こえてくる。
これ1枚でご飯が1杯いけてしまう。危うくご飯をお代わりしてしまうところだった。

写真では2本乗っているようにみえますが、これは1匹を開いたもの。香味野菜入りの特製香りソースがかかっています。油淋鶏のアナゴ版といったらいいでしょうか。なかなか美味しかったです。
ということで、「獅門酒楼」のランチから 20年分を放出③はここまで。
つづく……
