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Channel: 中華街ランチ探偵団「酔華」
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消された平野威馬雄

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 ここは元町薬師堂。

 もともとはメインストリートを挟んだ向かい側(元町プラザのあたり)に増徳院という寺があった。寺は関東大震災で全焼し、昭和3年に南区の現在地で再建されたが、薬師堂は南区に移転せず、ここに残った。

 元町薬師の縁日はたいへん賑やかだったそうで、外国人もたくさん来ていたという。そんな彼らと日本人女性が出会う場所ということで、“色薬師”とも呼ばれていた。

 フランス文学者の平野威馬雄(1900年~1986年)も、この縁日には頻繁に訪れていた。
 彼自身、フランス系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた混血児だったからだろうか。


 さて、その薬師堂の壁が最近、こんな風にスッキリしていることに気がついた。(冒頭の写真)

 4年ほど前に撮影した写真をご覧いただこうか。(下の写真)


 壁には平野威馬雄が作詞した歌が掲げられていたのである。



 「お薬師さま」。 作詞:平野威馬雄 作曲:菊村紀彦

1 春咲きそめた白梅の 明治も若い 横浜の 山手元町 鐘が鳴る
  薬師参りの 鐘が鳴る 瑠璃光如来の 鐘が鳴る

2 エゲレスフランスオランダ人 日傘をさした洋装に ステッキついた 若紳士
  お高祖頭巾は武家むすめ マドロスさんがのぞいていく

3 文明開化の横浜の 異人屋敷に 灯がつけば 港うっすら 朧月
  近くきこえる浪音は 母がうたった子守唄


 「ヨコハマシャンソン」。 作詞:平野威馬雄 作曲:菊村紀彦

1 手のくぼに かぞえきれない星をつかもう かぞえきれない しあわせをつかもう
  手のくぼに しあわせの星をつかもう 聖ミカエル教会で ミモザのような鐘が鳴る
  二人で歩いた外人墓地 古い十字架にからんだツタの ひと葉 ひと葉に想いが宿る

2 手のくぼに かぞえきれない星をつかもう かぞえきれない しあわせをつかもう
  手のくぼに しあわせの星をつかもう 海岸通りの 通り雨 甘ずいような 通り雨
  二人で歩いたフランス波止場 ボンソワールムッシュと呼びかけられて
  はっとはなした指と指よ
  手のくぼに かぞえきれない星をつかもう かぞえきれない しあわせをつかもう
  手のくぼに しあわせの星をつかもう


 それが、いつの間にか消されていた……

 なぜ外したのだろうか。


 この2つの曲を一度聴いてみたいと思っているのだが、ネットで検索してもなかなか出てこない。
 わずかに分かったことは、どうやら自主制作でレコードが作られているらしいということ。
 
 「ヨコハマシャンソン」はロマン・ムジカ・オーケストラの演奏。「お薬師さま」は有馬徹とノーチェ・クパーナの演奏だ。歌はもちろん平野威馬雄の娘である、シャンソン歌手・料理愛好家の平野レミ。
 
 幻のレコードのようだね。


 これは1980年代に撮影した元町薬師堂。
 歌詞が架けられていない。

 元に戻ったということか。

 

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